裁判所
内閣総理大臣の任期 |
(1)債権者の異議
会社が合併などの組織再編行為をすると財務内容や収益力が変わる可能性がある。会社と取引をしている債権者は組織再編行為に重大な利害関係をもつ。そこで債権者保護手続が認められている。 その手続は(ア)公告、(イ)知れた債権者への個別の催告、(ウ)「異議」を述べた債権者への弁済等、である。 債権者保護手続は、合併・会社分割・株式交換・株式移転のほか、資本金・準備金の額の減少(449条)・組織変更の場合にとらなければならない。また、合同会社の資本金額の減少(627条)・持分の払戻し(635条)・持分会社が解散後に財産処分の方法を定めた場合(670条)、外国会社の日本における代表者が全員退任する場合(820条・822条4項)にも債権者保護手続をとらなければならない。 (2)事業譲渡等 事業譲渡をする場合に会社は債権者保護手続をとる必要はない。 (3)組織変更 株式会社が持分会社に組織変更する場合には、組織変更をする旨、計算書類等(規則189条)、債権者が一定の期間内(1週間以上)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、知れている債権者に個別の催告をしなければならない(779条2項)。官報のほか日刊紙による方法か電子公告によるときは各別の催告は不要である(779条3項)。 債権者は期間内に会社に対し異議を述べることができる(779条1項)。異議を述べないまま期間が経過した場合には債権者は組織変更について承認したものとみなされる(779条4項)。 会社は異議を述べた債権者に対し、弁済・担保の提供・弁済財産の信託のいずれかをしなければならない(779条5項本文)。ただし、組織変更しても当該債権者を害するおそれがない場合には弁済等をしなくてよい(779条5項ただし書)。 株式会社へ組織変更する持分会社も債権者保護手続をとらなければならない(781条2項による779条の準用)。 (4)吸収合併・新設合併 株式会社が合併する場合には、合併をする旨、相手会社の商号・住所、計算書類等(規則189条・199条・208条)、債権者が一定の期間内(1週間以上)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、知れている債権者に個別の催告をしなければならない(789条2項・799条2項・810条2項)。官報のほか日刊紙による方法か電子公告によるときは各別の催告は不要である(789条3項・799条3項・810条3項)。 債権者は期間内に会社に対し異議を述べることができる(789条1項1号・799条1項1号・810条1項1号)。異議を述べないまま期間が経過した場合には債権者は合併について承認したものとみなされる(789条4項・799条4項・810条4項)。 会社は異議を述べた債権者に対し、弁済・担保の提供・弁済財産の信託のいずれかをしなければならない(789条5項本文・799条5項本文・810条5項本文)。ただし、合併しても当該債権者を害するおそれがない場合には弁済等をしなくてよい(789条5項ただし書・799条5項ただし書・810条5項ただし書)。 合併する持分会社も債権者保護手続をとらなければならない(793条2項による789条の準用・802条2項による799条の準用・813条2項による810条の準用)。 (5)吸収分割・新設分割 株式会社が会社分割する場合には、会社分割をする旨、相手会社の商号・住所、計算書類等(規則189条・199条・208条)、債権者が一定の期間内(1週間以上)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、知れている債権者に個別の催告をしなければならない(789条2項・799条2項・810条2項)。官報のほか日刊紙による方法か電子公告によるときは各別の催告は不要である(789条3項・799条3項・810条3項)。ただし、新設分割における分割会社の不法行為債権者には各別の催告を省略できない(810条3項かっこ書) 承継会社の債権者は期間内に会社に対し異議を述べることができる(799条1項2号)。分割会社の債権者のうち、会社分割後も分割会社に請求できる債権者は異議を述べることができない。異議を述べることができるのは、分割会社に債務の履行を請求できない債権者である(789条1項2号・810条1項2号)。また、人的分割(分割の対価として全部取得条項付株式の取得対価が承継会社株式であるとき、剰余金の配当財産が承継会社株式であるとき)の場合は、分割会社のすべての債権者は異議を述べることができる(789条1項2号かっこ書・810条1項2号かっこ書)。 異議を述べないまま期間が経過した場合には債権者は会社分割について承認したものとみなされる(789条4項・799条4項・810条4項)。 会社は異議を述べた債権者に対し、弁済・担保の提供・弁済財産の信託のいずれかをしなければならない(789条5項本文・799条5項本文・810条5項本文)。ただし、会社分割しても当該債権者を害するおそれがない場合には弁済等をしなくてよい(789条5項ただし書・799条5項ただし書・810条5項ただし書)。 会社分割する合同会社も承継する持分会社も債権者保護手続をとらなければならない(793条2項による789条の準用・802条2項による799条の準用・813条2項による810条の準用)。 (6)株式交換 株式交換をしても当事会社は当然には消滅しないし、当然に債務を承継することはない。したがって、基本的には債権者保護手続は不要である。 完全子会社の発行した新株予約権付社債を完全親会社が引き継ぐ場合、子会社の新株予約権付社債権者は異議を述べることができる(789条1項3号)。以後、親会社からしか弁済を受けることができなくなるからである。完全親会社となる会社はこれによって多くの債務を抱えることになるので、親会社の債権者は異議を述べることができる(799条1項3号後段)。親会社が子会社株主に交付する株式交換対価に親会社株式以外の財産が含まれる場合にも、親会社債権者は異議を述べることができる(799条1項3号前段)。子会社株式を取得する代わりにそれだけ親会社財産が減少するからである。 債権者が異議を述べることができる場合には、会社は株式交換をする旨、相手会社の商号・住所、計算書類等(規則189条・199条)、債権者が一定の期間内(1週間以上)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、知れている債権者に個別の催告をしなければならない(789条2項・799条2項)。官報のほか日刊紙による方法か電子公告によるときは各別の催告は不要である(789条3項・799条3項)。 前述の債権者は期間内に会社に対し異議を述べることができる(789条1項3号・799条1項3号)。異議を述べないまま期間が経過した場合には債権者は株式交換について承認したものとみなされる(789条4項・799条4項)。 会社は異議を述べた債権者に対し、弁済・担保の提供・弁済財産の信託のいずれかをしなければならない(789条5項本文・799条5項本文)。ただし、株式交換しても当該債権者を害するおそれがない場合には弁済等をしなくてよい(789条5項ただし書・799条5項ただし書)。 合同会社は株式交換完全親会社になれるので、債権者保護手続が合同会社に準用される(802条2項による799条の準用)。 (7)株式移転 株式移転をしても当事会社は当然には消滅しないし、当然に債務を承継することはない。したがって、基本的には債権者保護手続は不要である。 完全子会社の発行した新株予約権付社債を完全親会社が引き継ぐ場合、子会社の新株予約権付社債権者は異議を述べることができる(810条1項3号)。以後、親会社からしか弁済を受けることができなくなるからである。 この場合には、会社は株式移転をする旨、相手会社の商号・住所、計算書類等(規則189条・199条)、債権者が一定の期間内(1週間以上)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、知れている債権者に個別の催告をしなければならない(810条2項)。官報のほか日刊紙による方法か電子公告によるときは各別の催告は不要である(810条3項)。 前述の債権者は期間内に会社に対し異議を述べることができる(810条1項3号)。異議を述べないまま期間が経過した場合には債権者は株式移転について承認したものとみなされる(810条4項)。 会社は異議を述べた債権者に対し、弁済・担保の提供・弁済財産の信託のいずれかをしなければならない(810条5項本文)。ただし、株式移転しても当該債権者を害するおそれがない場合には弁済等をしなくてよい(810条5項ただし書)。
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