| Home | BBS | Schedule | Chat | Blog | Links |
HOME > 司法試験〜短答の鬼 > 組織再編(8)

9.効力発生と登記

(1)事業譲渡等
 事業譲渡等の効力は効力発生日に生じる(467条1項各号列記以外の部分)。合併や会社分割とは異なり、包括的に権利義務が移転するのではないため、事業を構成する権利義務について個別に移転手続をとる必要がある。たとえば、パソコン製造事業を譲り受けた場合、製造工場の建物所有権移転登記の移転手続をとらなければならない。

(2)組織変更
 ア)株式会社
 組織変更の効力は効力発生日に生じ、会社は持分会社になる(745条1項)。会社は効力発生日に組織変更計画で定めた定款事項(744条1項2号〜4号)へ定款変更したとみなされる(745条2項)。株主は効力発生日に組織変更後の持分会社の社員となる(745条3項)。組織変更の対価として株主に社債を交付する場合には(744条1項5号イ)、当該株主は効力発生日に持分会社の社債権者となる(745条4項)。会社の新株予約権は、組織変更の効力発生日に消滅する(745条5項)。ただし、債権者保護手続が完了していない場合、組織変更を中止した場合にはこれらの効力は生じない(745条6項)。
 会社は組織変更の効力発生日を変更することができる(780条1項)。効力発生日を遅らせる場合、変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(780条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(780条2項かっこ書)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(745条)として効力が生じる(780条3項)。
 組織変更した株式会社は、効力発生日から2週間以内に、変更前の株式会社の解散登記と変更後の持分会社の設立登記をしなければならない(920条)。
 イ)持分会社
 組織変更の効力は効力発生日に生じ、持分会社は株式会社になる(747条1項)。会社は効力発生日に組織変更計画で定めた定款事項(746条1号2号)へ定款変更したとみなされる(747条2項)。社員は効力発生日に組織変更後の株式会社の株主となる(747条3項)。組織変更の対価として社員に社債を交付する場合には(746条7号イ)、当該社員は効力発生日に株式会社の社債権者となる(747条4項1号)。組織変更の対価として社員に新株予約権を交付する場合には(746条7号ロ)、当該社員は効力発生日に株式会社の新株予約権者となる(747条4項2号)。組織変更の対価として社員に新株予約権付社債を交付する場合には(746条7号ハ)、当該社員は効力発生日に株式会社の社債権者・新株予約権者となる(747条4項3号)。ただし、債権者保護手続が完了していない場合、組織変更を中止した場合にはこれらの効力は生じない(747条5項)。
 持分会社は組織変更の効力発生日を変更することができる(780条1項・782条2項前段)。効力発生日を遅らせる場合、変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(780条2項・782条2項前段)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(780条2項かっこ書・782条2項前段)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(747条・781条1項)として効力が生じる(780条3項・781条2項)。
 組織変更した持分会社は、効力発生日から2週間以内に、変更前の持分会社の解散登記と変更後の株式会社の設立登記をしなければならない(920条)。

(3)吸収合併
 ア)株式会社が存続会社
 吸収合併の効力は合併契約で定めた効力発生日に生じる(750条1項)。消滅会社は効力発生日に解散するが(471条4号)、清算はしない(475条1号かっこ書)。消滅会社の解散は登記後でなければ第三者に対抗できない(750条2項)。存続会社への包括承継が行われても、解散登記まではその承継を対抗できないという趣旨である。
 合併対価として消滅会社株主(社員)に存続会社の株式を交付する場合は(749条1項2号イ)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社株主となる(750条3項1号)。合併対価として消滅会社株主(社員)に存続会社の社債を交付する場合は(749条1項2号ロ)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社の社債権者となる(750条3項2号)。合併対価として消滅会社株主(社員)に存続会社の新株予約権を交付する場合は(749条1項2号ハ)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社の新株予約権者となる(750条3項3号)。合併対価として消滅会社株主(社員)に存続会社の新株予約権付社債を交付する場合は(749条1項2号ニ)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社の社債権者・新株予約権者となる(750条3項4号)。
 消滅会社の新株予約権は効力発生日に消滅する(750条4項)。したがって、消滅会社の新株予約権者に存続会社の新株予約権を交付する場合には(749条1項4号イ)、当該新株予約権者は効力発生日に存続会社の新株予約権者となる(750条5項)。これらの効力は、消滅会社・存続会社における各債権者保護手続が完了していない場合、吸収合併を中止する場合には生じない(750条6項)。
 手続に遅れが出ている場合には、効力発生日を変更する必要がある。当事会社間の合意によって吸収合併の効力発生日を変更することができる(790条1項)。消滅会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(790条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(790条2項かっこ書)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(750条等)として効力が生じる(790条3項)。
 吸収合併したときは、効力発生日から2週間以内に消滅会社の解散登記、存続会社の変更登記をしなければならない(921条)。
 イ)持分会社が存続会社
 吸収合併の効力は合併契約で定めた効力発生日に生じる(752条1項)。消滅会社は効力発生日に解散するが(471条4号)、清算はしない(475条1号かっこ書)。消滅会社の解散は登記後でなければ第三者に対抗できない(752条2項)。存続会社への包括承継が行われても、解散登記まではその承継を対抗できないという趣旨である。
 消滅会社株主(社員)が存続会社の社員となる場合は(751条1項2号)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社の社員となる(752条3項前段)。この場合、存続会社は社員について定款変更したものと擬制される(752条3項後段)。合併対価として消滅会社株主(社員)に存続会社の社債を交付する場合は(751条1項3号イ)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社の社債権者となる(752条4項)。
 消滅会社の新株予約権は効力発生日に消滅する(752条5項)。これらの効力は、消滅会社・存続会社における各債権者保護手続が完了していない場合、吸収合併を中止する場合には生じない(752条6項)。
 手続に遅れが出ている場合には、効力発生日を変更する必要がある。当事会社間の合意によって吸収合併の効力発生日を変更することができる(790条1項・793条2項)。消滅会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(790条2項・793条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(790条2項かっこ書)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(752条等)として効力が生じる(790条3項・793条2項)。
 吸収合併したときは、効力発生日から2週間以内に消滅会社の解散登記、存続会社の変更登記をしなければならない(921条)。

(4)新設合併
 ア)株式会社が設立会社
 新設合併の場合は設立会社の成立の日に合併の効力が生じる(754条1項)。会社の「成立」は、設立の登記による(49条)。したがって、新設合併は設立会社の設立登記によってその効力が発生する。
 株式会社同士の新設合併において株式会社を設立するときは、消滅会社の合併承認総会決議(804条1項)の日・種類株主総会の決議の日・消滅会社株主への通知または公告の日(806条3項4項)から20日後・消滅会社新株予約権者への通知または公告の日(808条3項4項)から20日後・債権者保護手続(810条)が終了した日・消滅会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に消滅会社の解散登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(922条1項1号)。合併の手続に着手した以上、一定期間で設立されることが通常期待されるので、このような規定が設けられている。消滅会社が持分会社同士で、株式会社を新設するときは、総社員の同意を得た日(813条1項。ただし書の場合は手続終了日)・債権者保護手続(810条・813条2項)が終了した日・消滅会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に消滅会社の解散登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(922条1項2号)。株式会社と持分会社とが新設合併するときは、前述の日からもっとも遅い日から2週間以内に消滅会社の解散登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(922条1項3号)。
 新設合併設立会社は設立登記により成立し、設立会社の権利義務を承継する(754条1項)。消滅会社の株主・社員は、会社成立の日に設立会社の株主となる(754条2項)。合併対価として消滅会社株主・社員に設立会社の社債を交付する場合は(753条1項8号イ)、当該株主・社員は会社成立の日に設立会社の社債権者となる(754条3項1号)。合併対価として消滅会社株主・社員に設立会社の新株予約権を交付する場合は(753条1項8号ロ)、当該株主・社員は会社成立の日に設立会社の新株予約権者となる(754条3項2号)。合併対価として消滅会社株主・社員に設立会社の新株予約権付社債を交付する場合は(753条1項8号ハ)、当該株主・社員は会社成立の日に設立会社の社債権者・新株予約権者となる(754条3項3号)。
 消滅会社の新株予約権は設立会社の成立の日に消滅する(754条4項)。したがって、消滅会社の新株予約権者に設立会社の新株予約権を交付する場合には(753条1項10号イ)、当該新株予約権者は会社成立の日に設立会社の新株予約権者となる(754条5項)。
 設立会社は定款作成する必要はなく(814条1項)、消滅会社が設立会社の定款を作成する(814条2項)。
 設立会社は成立の日、すなわち設立登記の日後遅滞なく、新設合併が効力を生じた日(規則211条1号)・消滅会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者の異議の各手続の経過(同条2号)・新設合併により承継した重要な権利義務(同条3号)・その他の重要事項(同条4号)を記載した書面または記録した電磁的記録を作成しなければならない(815条1項)。設立会社はこれらの書面・記録を成立の日から6か月間、本店に備え置かなければならない(815条3項1号)。 設立会社の株主および債権者は営業時間内はいつでも、当該書面の閲覧請求・当該電磁的記録の閲覧請求ができる(815条4項1号3号)。株主・債権者は、当該書面の謄本または抄本の交付請求・電磁的記録の提供またはそれを記載した書面の交付請求もできるが(815条4項2号4号)、費用を負担しなければならない(815条4項ただし書)。
 イ)持分会社が設立会社
 新設合併の場合は設立会社の成立の日に合併の効力が生じる(756条1項)。会社の「成立」は、設立の登記による(49条)。したがって、新設合併は設立会社の設立登記によってその効力が発生する。
 株式会社同士の新設合併において持分会社を設立するときは、消滅会社の総株主の同意(804条2項)を得た日・消滅会社新株予約権者への通知または公告の日(808条3項4項)から20日後・債権者保護手続(810条)が終了した日・消滅会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に消滅会社の解散登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(922条2項1号)。消滅会社が持分会社同士で、持分会社を新設するときは、総社員の同意を得た日(813条1項。ただし書の場合は手続終了日)・債権者保護手続(810条・813条2項)が終了した日・消滅会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に消滅会社の解散登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(922条2項2号)。株式会社と持分会社とが新設合併するときは、前述の日からもっとも遅い日から2週間以内に消滅会社の解散登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(922条2項3号)。
 新設合併設立会社は設立登記により成立し、設立会社の権利義務を承継する(756条1項)。消滅会社の株主・社員は、会社成立の日に設立会社の社員となる(756条2項)。合併対価として消滅会社株主・社員に設立会社の社債を交付する場合は(755条1項6号)、当該株主・社員は会社成立の日に設立会社の社債権者となる(756条3項)。消滅会社の新株予約権は設立会社の成立の日に消滅する(756条4項)。
 設立会社は定款作成する必要はなく(816条1項)、消滅会社が設立会社の定款を作成する(816条2項)。

(5)吸収分割
 ア)株式会社が承継会社
 吸収分割の効力は会社分割契約で定めた効力発生日に生じる(759条1項)。
 分割会社の債権者保護手続(789条1項2号・793条2項)において債権者がいまだに各別の催告を受けていない場合は、当該債権者が分割契約において分割会社に履行請求できないものとされているときであっても、分割会社に財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(759条2項)。同様に分割会社の債権者が債権者保護手続の格別の催告を受けていない場合、当該債権者は分割契約において承継会社に対して債務の履行をすることができないとされているときであっても、承継会社に対して承継財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(759条3項)。すなわち、債権者保護手続が完了していなければ効力発生日後も債権者は従前の債務者に対して履行を請求できるのである。
 分割対価として分割会社に承継会社の株式を交付する場合は(758条4号イ)、吸収分割会社は効力発生日に承継会社の株主となる(759条4項1号)。分割の対価として分割会社に承継会社の社債を交付する場合は(758条4号ロ)、吸収分割会社は効力発生日に承継会社の社債権者となる(759条4項2号)。分割対価として分割会社に承継会社の新株予約権を交付する場合は(758条4号ハ)、吸収分割会社は効力発生日に承継会社の新株予約権者となる(759条4項3号)。分割対価として分割会社に承継会社の新株予約権付社債を交付する場合は(758条4号ニ)、吸収分割会社は効力発生日に承継会社の社債権者・新株予約権者となる(759条4項4号)。
 分割会社の新株予約権者に承継会社の新株予約権を交付する場合には(758条5号)、当該新株予約権者は効力発生日に承継会社の新株予約権者となる(759条5項)。これらの効力は、分割会社・承継会社における各債権者保護手続(789条・793条2項・799条)が完了していない場合、吸収分割を中止する場合には生じない(759条6項)。
 手続に遅れが出ている場合には、効力発生日を変更する必要がある。当事会社間の合意によって吸収分割の効力発生日を変更することができる(790条1項)。分割会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(790条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(790条2項かっこ書)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(759条等)として効力が生じる(790条3項)。
 吸収分割したときは、効力発生日から2週間以内に分割会社・承継会社の変更登記をしなければならない(923条)。
 イ)持分会社が承継会社
 吸収分割の効力は合併契約で定めた効力発生日に生じる(761条1項)。
 分割会社の債権者保護手続(789条1項2号・793条2項)において債権者がいまだに各別の催告を受けていない場合は、当該債権者が分割契約において分割会社に履行請求できないものとされているときであっても。分割会社に財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(761条2項)。同様に分割会社の債権者が債権者保護手続の格別の催告を受けていない場合、当該債権者は分割契約において承継会社に対して債務の履行をすることができないとされているときであっても、承継会社に対して承継財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(761条3項)。すなわち、債権者保護手続が完了していなければ効力発生日後も債権者は従前の債務者に対して履行を請求できるのである。
 分割会社が承継会社の社員となる場合は(760条4項)、吸収分割会社は効力発生日に承継会社の社員となる(761条4項前段)。この場合、承継会社は社員について定款変更したものと擬制される(761条4項後段)。分割対価として分割会社に存続会社の社債を交付する場合は(760条5号イ)、当該株主・社員は効力発生日に存続会社の社債権者となる(761条5項)。
 これらの効力は、分割会社・承継会社における各債権者保護手続(789条・793条2項・799条・802条2項)が完了していない場合、吸収分割を中止する場合には生じない(761条6項)。
 手続に遅れが出ている場合には、効力発生日を変更する必要がある。当事会社間の合意によって吸収分割の効力発生日を変更することができる(790条1項・793条2項)。分割会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(790条2項・793条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(790条2項かっこ書)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(761条等)として効力が生じる(790条3項・793条2項)。
 吸収分割したときは、効力発生日から2週間以内に分割会社・承継会社の変更登記をしなければならない(923条)。

(6)新設分割
 ア)株式会社が設立会社
 新設分割の場合は設立会社の成立の日に会社分割の効力が生じる(764条1項)。会社の「成立」は、設立の登記による(49条)。したがって、新設分割は設立会社の設立登記によってその効力が発生する。
 株式会社同士の新設分割において株式会社を設立するときは、簡易分割(805条)を除いて分割会社における株主総会の承認決議(804条1項)の日・種類株主総会の決議の日・分割会社株主への通知または公告の日(806条3項4項)から20日後・分割会社新株予約権者への通知または公告の日(808条3項4項)から20日後・債権者保護手続(810条)が終了した日・分割会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に分割会社の変更登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(924条1項1号)。会社分割の手続に着手した以上、一定期間で設立されることが通常期待されるので、このような規定が設けられている。分割会社が持分会社同士で、株式会社を新設するときは、総社員の同意を得た日(813条1項。ただし書の場合は手続終了日)・債権者保護手続(810条・813条2項)が終了した日・分割会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に分割会社の変更登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(924条1項2号)。株式会社と持分会社とが新設分割するときは、前述の日からもっとも遅い日から2週間以内に分割会社の変更登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(924条1項3号)。
 新設分割設立会社は設立登記により成立し、設立会社の権利義務を承継する(764条1項)。
 分割会社の債権者保護手続(810条1項2号・813条2項)において債権者がいまだに各別の催告を受けていない場合は、当該債権者が分割契約において分割会社に履行請求できないものとされているときであっても、分割会社に財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(764条2項)。同様に分割会社の債権者が債権者保護手続の格別の催告を受けていない場合、当該債権者は分割契約において設立会社に対して債務の履行をすることができないとされているときであっても、設立会社に対して承継財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(764条3項)。すなわち、債権者保護手続が完了していなければ効力発生日後も債権者は従前の債務者に対して履行を請求できるのである。
 分割会社は、会社成立の日に設立会社の株主となる(764条4項)。分割対価として分割会社に設立会社の社債を交付する場合は(763条8号イ)、分割会社は会社成立の日に設立会社の社債権者となる(764条5項1号)。分割対価として分割会社に設立会社の新株予約権を交付する場合は(763条8号ロ)、設立会社は会社成立の日に設立会社の新株予約権者となる(764条5項2号)。分割対価として分割会社に設立会社の新株予約権付社債を交付する場合は(763条8号ハ)、分割会社は会社成立の日に設立会社の社債権者・新株予約権者となる(764条5項3号)。
 分割会社の新株予約権者に設立会社の新株予約権を交付する場合には(763条10号)、会社の成立の日に分割会社の新株予約権は消滅し、当該新株予約権者は設立会社の新株予約権者となる(764条7項)。
 設立会社は定款作成する必要はなく(814条1項)、分割会社が設立会社の定款を作成する(814条2項)。
 合同会社がする新設分割の設立会社は、成立の日、すなわち設立登記の日後遅滞なく、新設合併が効力を生じた日(規則212条1号)・分割会社における債権者の保護手続(810条・813条2項)の経過(同条2号)・新設分割により承継した重要な権利義務(同条3号)・その他の重要事項(同条4号)を記載した書面または記録した電磁的記録を新設分割会社と共同して作成しなければならない(815条2項)。設立会社(合同会社が新設分割する場合の設立会社)はこれらの書面・記録を成立の日から6か月間、本店に備え置かなければならない(815条3項2号)。株式会社がする新設分割における設立会社は、新設分割の効力が生じた日(規則209条1号)・分割会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・会社分割により承継した重要な権利義務(同条3号)・その他の重要事項(同条4号)を記載した書面または電磁的記録(211条1項1号)を会社成立の日から6か月間本店に備え置かなければならない(815条3項2号)。
 設立会社の株主および債権者に加えてその他の利害関係人は営業時間内はいつでも、当該書面の閲覧請求・当該電磁的記録の閲覧請求ができる(815条4項1号3号・815条5項)。株主・債権者その他の利害関係人は、当該書面の謄本または抄本の交付請求・電磁的記録の提供またはそれを記載した書面の交付請求もできるが(815条4項2号4号・815条5項)、費用を負担しなければならない(815条4項ただし書・815条5項)。
 イ)持分会社が設立会社
 新設分割の場合は設立会社の成立の日に会社分割の効力が生じる(766条1項)。会社の「成立」は、設立の登記による(49条)。したがって、新設分割は設立会社の設立登記によってその効力が発生する。
 株式会社同士の新設分割において持分会社を設立するときは、簡易分割(805条)を除いて分割会社における株主総会の承認決議(804条1項)を得た日・種類株主総会の決議の日・分割会社の株主への通知または公告の日(806条3項4項)から20日後・債権者保護手続(810条)が終了した日・分割会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に分割会社の変更登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(924条2項1号)。分割会社が合同会社同士で、持分会社を新設するときは、総社員の同意を得た日(813条1項。ただし書の場合は手続終了日)・債権者保護手続(810条・813条2項)が終了した日・分割会社が合意により定めた日のうち、もっとも遅い日から2週間以内に分割会社の変更登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(924条2項2号)。株式会社と合同会社とが新設分割するときは、前述の日からもっとも遅い日から2週間以内に分割会社の変更登記及び設立会社の設立登記をしなければならない(924条2項3号)。
 新設分割設立会社は設立登記により成立し、設立会社の権利義務を承継する(766条1項)。
 分割会社の債権者保護手続(810条1項2号・813条2項)において債権者がいまだに各別の催告を受けていない場合は、当該債権者が分割契約において分割会社に履行請求できないものとされているときであっても、分割会社に財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(766条2項)。同様に分割会社の債権者が債権者保護手続の格別の催告を受けていない場合、当該債権者は分割契約において設立会社に対して債務の履行をすることができないとされているときであっても、設立会社に対して承継財産の価額を限度として債務の履行を請求できる(766条3項)。すなわち、債権者保護手続が完了していなければ効力発生日後も債権者は従前の債務者に対して履行を請求できるのである。
 分割会社は、会社成立の日に設立会社の社員となる(766条4項)。分割対価として分割会社に設立会社の社債を交付する場合は(765条1項6号)、分割会社は設立会社の成立の日に設立会社の社債権者となる(766条5項)。
 設立会社は定款作成する必要はなく(816条1項)、分割会社が設立会社の定款を作成する(816条2項)。

(7)株式交換
 ア)株式会社が完全親会社
 株式交換の効力は株式交換契約で定めた効力発生日に生じ、完全親会社は完全子会社の発行済株式のすべてを取得する(769条1項)。完全子会社株式が譲渡制限株式の場合、譲渡制限株式の取得についての承認(137条1項)をしたとみなされる(769条2項)。
 株式交換の対価として完全子会社株主に完全親会社の株式を交付する場合は(768条1項2号イ)、当該完全子会社株主は効力発生日に完全親会社の株主となる(769条3項1号)。株式交換の対価として完全子会社株主に完全親会社の社債を交付する場合は(768条1項2号ロ)、当該完全子会社株主は効力発生日に完全親会社の社債権者となる(769条3項2号)。株式交換の対価として完全子会社株主に完全親会社の新株予約権を交付する場合は(768条1項2号ハ)、当該完全子会社株主は効力発生日に完全親会社の新株予約権者となる(769条3項3号)。株式交換の対価として完全子会社株主に完全親会社の新株予約権付社債を交付する場合は(768条1項2号ニ)、当該完全子会社株主は効力発生日に完全親会社の社債権者・新株予約権者となる(769条3項4号)。
 完全子会社の新株予約権者に完全親会社の新株予約権を交付する場合には(768条1項4号)、株式交換の効力発生日に完全子会社の新株予約権は消滅し、当該新株予約権者は完全親会社の新株予約権者となる(769条4項)。完全子会社の新株予約権を完全親会社が引き継ぐ場合において、それが新株予約権付社債のときは(768条1項4号ハ)、株式交換の効力発生日に完全親会社は当該新株予約権付社債の社債にかかる債務を承継する(769条5項)。
 これらの効力は、完全子会社・完全親会社における各債権者保護手続(789条・799条)が完了していない場合(株式交換においては原則として債権者保護手続は不要)、株式交換を中止する場合には生じない(769条6項)。
 手続に遅れが出ている場合には、効力発生日を変更する必要がある。当事会社間の合意によって株式交換の効力発生日を変更することができる(790条1項)。完全子会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(790条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(790条2項かっこ書)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(769条等)として効力が生じる(790条3項)。
 株式交換の際、登記事項はない。
 イ)合同会社が完全親会社
 株式交換の効力は株式交換契約で定めた効力発生日に生じ、完全親会社は完全子会社の発行済株式のすべてを取得する(771条1項)。完全子会社株式が譲渡制限株式の場合、譲渡制限株式の取得についての承認(137条1項)をしたとみなされる(771条2項)。
 株式交換の際に完全子会社株主が完全親会社の社員となる場合は(770条1項2号)、当該完全子会社株主は効力発生日に完全親会社の社員となる(771条3項前段)。この場合、完全親会社は効力発生日に社員について定款変更したものとみなされる(771条3項後段)。株式交換の対価として完全子会社株主に完全親会社の社債を交付する場合は(770条1項3号イ)、当該完全子会社株主は効力発生日に完全親会社の社債権者となる(771条4項)。
 これらの効力は、完全子会社・完全親会社における各債権者保護手続(799条・802条2項)が完了していない場合(株式交換においては原則として債権者保護手続は不要)、株式交換を中止する場合には生じない(771条5項)。
 手続に遅れが出ている場合には、効力発生日を変更する必要がある。当事会社間の合意によって株式交換の効力発生日を変更することができる(790条1項・793条2項)。完全子会社は変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(790条2項・793条2項)。効力発生日を早める場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告する必要がある(790条2項かっこ書・793条2項)。変更の公告をすると、変更後の効力発生日を効力発生日(769条等)として効力が生じる(790条3項・793条2項)。
 株式交換の際の登記事項はない。

(8)株式移転
 株式移転は設立会社の成立の日にその効力が生じる(764条1項)。会社の「成立」は、設立の登記によるので(49条)、株式移転は設立会社の設立登記によってその効力が発生する。  株式移転の際は、完全子会社における株主総会の承認決議(804条1項)の日・種類株主総会の決議の日・完全子会社株主への通知または公告の日(806条3項4項)から20日後・完全子会社新株予約権者への通知または公告の日(808条3項4項)から20日後・債権者保護手続(810条)が終了した日・会社が定めた日(複数の会社が共同株式移転するときは合意により定めた日)のうち、もっとも遅い日から2週間以内に設立会社の設立登記をしなければならない(925条)。株式移転の手続に着手した以上、一定期間で設立されることが通常期待されるので、このような規定が設けられている。
 株式移転設立会社は設立登記により成立し、設立会社は完全子会社の発行済株式のすべてを取得する(774条1項)。
 完全子会社の株主は、会社成立の日に設立会社の株主となる(774条2項)。株式移転の対価として完全子会社株主に設立会社の社債を交付する場合は(773条1項7号イ)、完全子会社株主は会社成立の日に設立会社の社債権者となる(774条3項1号)。株式移転の対価として完全子会社株主に設立会社の新株予約権を交付する場合は(773条1項7号ロ)、完全子会社株主は会社成立の日に設立会社の新株予約権者となる(774条3項2号)。株式移転の対価として完全子会社株主に設立会社の新株予約権付社債を交付する場合は(773条1項7号ハ)、完全子会社株主は会社成立の日に設立会社の社債権者・新株予約権者となる(774条3項3号)。
 完全子会社の新株予約権者に設立会社の新株予約権を交付する場合には(773条1項9号)、会社の成立の日に完全子会社の新株予約権は消滅し、当該新株予約権者は設立会社の新株予約権者となる(774条4項)。完全子会社の新株予約権を設立会社が引き継ぐ場合において、それが新株予約権付社債のときは(773条1項9号ハ)、設立会社の成立の日に設立会社は当該新株予約権付社債の社債にかかる債務を承継する(774条5項)。
 設立会社は定款作成する必要はなく(814条1項)、完全子会社が設立会社の定款を作成する(814条2項)。
 完全子会社は、株式移転の効力が生じた日(規則210条1号)・完全子会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・株式移転により設立会社が承継した株式の数(同条3号)・その他の重要事項(同条4号)を記載した書面または電磁的記録を設立会社が成立した日後遅滞なく作成しなけばならない(211条1項2号)。設立会社は完全子会社が作成したこの書類・電磁的記録を会社成立の日から6か月間本店に備え置かなければならない(815条3項3号)。
 設立会社の株主および新株予約権者は営業時間内はいつでも、当該書面の閲覧請求・当該電磁的記録の閲覧請求ができる(815条4項1号3号・815条6項)。株主・新株予約権者は、当該書面の謄本または抄本の交付請求・電磁的記録の提供またはそれを記載した書面の交付請求もできるが(815条4項2号4号・815条6項)、費用を負担しなければならない(815条4項ただし書・815条6項)。
本店に備置く書面(電磁的記録)に記載(記録)する事項 備置開始日 備置きの終期 株主・債権者その他の利害関係人の権利
事業譲渡等 なし
組織変更する株式会社 なし
組織変更する持分会社 なし
吸収合併消滅会社(株式会社) −(効力発生日に解散する)
吸収合併消滅会社(持分会社) −(効力発生日に解散する)
吸収合併存続会社(株式会社) 吸収合併の効力が生じた日(規則200条1号)・消滅会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・存続会社における株式買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条3号)・合併により承継した重要な権利義務(同条4号)・消滅会社が備え置いた開示資料(同条5号)・存続会社が変更登記をした日(同条6号)・その他の重要な事項(同条7号) 効力発生日(803条3項1号) 6箇月間(801条3項1号) 書面の閲覧(801条4項1号)・書面の謄本・抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書))・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号)・電磁的記録の提供・それを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書))
吸収合併存続会社(持分会社) なし
新設合併消滅会社(株式会社) −(効力発生日に解散する)
新設合併消滅会社(持分会社) −(効力発生日に解散する)
吸収分割会社(株式会社) 吸収分割の効力が生じた日(規則189条1号)・分割会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・承継会社における株式買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条3号)・会社分割により承継した重要な権利義務(同条4号)・変更の登記をした日(同条5号)・その他の重要事項(同条6号) 効力発生日(791条2項) 6箇月間(791条2項) 書面の閲覧(791条3項1号)・書面の謄本・抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書))・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号)・電磁的記録の提供・それを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書))
吸収分割会社(持分会社) なし
吸収分割承継会社(株式会社) 吸収分割の効力が生じた日(規則201条1号)・分割会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・承継会社における株式買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条3号)・会社分割により承継した重要な権利義務(同条4号)・変更の登記をした日(同条5号)・その他の重要事項(同条6号) 効力発生日(801条3項2号) 6箇月間(801条3項2号) 書面の閲覧(801条4項1号5項)・書面の謄本または抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書)5項)・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号5項)・電磁的記録の提供またはそれを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書)5項)
吸収分割承継会社(持分会社) なし
新設分割会社(株式会社) 新設分割の効力が生じた日(規則209条1号)・分割会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・会社分割により承継した重要な権利義務(同条3号)・その他の重要事項(同条4号) 効力発生日(811条2項) 6箇月間(811条2項) 書面の閲覧(811条3項1号)・書面の謄本・抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書))・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号)・電磁的記録の提供・それを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書))
新設分割会社(持分会社) なし
株式交換完全子会社(株式会社) 株式交換の効力が生じた日(規則190条1号)・完全子会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・完全親会社における株式買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条3号)・完全親会社に移転した完全子会社株式の数(同条4号)・その他の重要事項(同条5号) 効力発生日(791条2項) 6箇月間(791条2項) 書面の閲覧(791条3項1号4項)・書面の謄本・抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書)4項)・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号4項)・電磁的記録の提供・それを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書)4項)
株式交換完全子会社(持分会社) −(持分会社は株式交換できない)
株式交換完全親会社(株式会社) 株式交換の効力が生じた日(801条3項3号・791条1項2号・規則190条1号)・完全子会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・完全親会社における株式買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条3号)・完全親会社に移転した完全子会社株式の数(同条4号)・その他の重要事項(同条5号) 効力発生日(801条3項3号) 6箇月間(801条3項3号) 書面の閲覧(801条4項3号6項)・書面の謄本または抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書)6項)・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号6項)・電磁的記録の提供またはそれを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書)6項)
株式交換完全親会社(合同会社) なし
株式移転完全子会社(株式会社) 株式移転の効力が生じた日(規則210条1号)・完全子会社における株式買取請求・新株予約権買取請求・債権者異議の各手続の経過(同条2号)・完全親会社に移転した完全子会社株式の数(同条3号)・その他の重要事項(同条4号) 効力発生日(811条2項) 6箇月間(811条2項) 書面の閲覧(811条3項1号4項)・書面の謄本・抄本の交付(同項2号・ただし費用はかかる(同項ただし書)4項)・電磁的記録の表示の閲覧(同項3号4項)・電磁的記録の提供・それを記載した書面の交付(同項4号。ただし費用はかかる(同項ただし書)4項)
株式移転完全子会社(持分会社) −(持分会社は株式移転できない)